子育てが終わった日のこと
末っ子が高校を卒業した春、ふと気づいたら家の中がとても静かでした。
「やっと終わった」という解放感と、「これからどうしよう」という戸惑いが、同時に胸の中にありました。長年「お母さん」として過ごしてきた日々が、急に遠くなったような感覚。うれしいはずなのに、なぜか手持ち無沙汰で、少し寂しい。
あの春の感覚を、今でもよく覚えています。
最初の数ヶ月は、何もしなかった
子育てが一段落してすぐ、何か新しいことを始めようとしました。でも体が動かなかった。正確には、何をしたいのかが、わからなかった。
子育て中は「子どものため」を軸に動いていたので、急に「自分のため」に何かを選ぼうとしても、選び方を忘れていたんだと思います。
しばらくは、ただゆっくり過ごすことにしました。朝ゆっくりコーヒーを飲む。好きな本を読む。昼間に一人で映画を観る。そんな当たり前のことが、じわじわと「自分の時間」を取り戻してくれました。
朝の時間が、自分のものになった
子育て中は、朝から家族のために動いていました。お弁当を作り、子どもを起こし、自分が食べる暇もなく送り出す——そんな毎日でした。
子育てが終わって、初めて「朝が自分のものになった」と感じました。誰かを起こさなくていい。急がなくていい。静かな朝に、好きなことをする時間がある。
最初は何をしていいかわからなくて、ただぼんやりしていましたが、そのうちに少しずつ朝の使い方が変わっていきました。今では朝の時間が一番好きです。
「自分はこれからどう生きるか」を考えた
ゆっくり過ごす時間の中で、少しずつ「これからのこと」を考えるようになりました。
仕事はずっと続けてきたけれど、子育てに合わせた働き方をしてきた分、「本当はどんな仕事がしたいか」を考えてこなかった気がして。
そこで出てきたのが、「人の役に立つ仕事をしたい」という気持ちでした。子育てを通じて、誰かの話を聞くことが好きだとわかっていたし、自分自身が転職で悩んだ経験もあった。そこからキャリアコンサルタントという資格を知り、挑戦してみることにしました。
お金のことも、ようやく向き合えた
子育て中は、教育費のことで頭がいっぱいでした。老後のことを考える余裕なんて、正直なかった。
でも子育てが終わって、毎月かかっていた教育費がなくなったとき、「この分を老後に回せる」とはじめて実感しました。遅いかもしれないけれど、50代・60代に向けて、少しずつ準備を始めようと思えたのは、子育てが終わってからでした。
「お母さん」を卒業して、自分に戻っていく
子育てが終わると、少し寂しいのは本当のことです。毎日必要とされていた日々が、急に静かになる。それが「喪失感」として胸に残るのは、それだけ一生懸命だった証拠だと思っています。
でも今は、あの春が「自分に戻るスタート地点」だったと感じています。
子育て中に後回しにしてきたこと、なんとなく「いつかやりたい」と思っていたこと。それを少しずつ、自分のペースで始めていく。40代後半のこの時間が、今のところ一番「自分らしい時間」に感じています。
これから子育てが終わる方へ
もし今、子育ての終わりが近づいていて、漠然とした不安や寂しさを感じているなら、それはとても自然なことだと伝えたいです。
焦らなくていい。すぐに何かを始めなくていい。まず、ゆっくり自分を取り戻すところから始めれば十分です。
その先に、きっと「次の自分」が待っています。



